
「パワー半導体」という言葉をニュースで聞くことが増えました。
特に近年注目を集めるのが SiC(炭化ケイ素) と GaN(窒化ガリウム) といった新素材を使った次世代デバイスです。
なぜ従来のシリコン(Si)ではなく、これらの新材料へ置き換わりつつあるのでしょうか?
その理由の一つが「電力ロスの削減」、そして世界的に懸念されている「銅不足問題」とも深く関係しています。
電力ロスを減らす=発熱が減る
パワー半導体の性能は、効率と熱の関係に直結します。データセンターやEVなど、高出力が要求される分野では “いかに熱を減らせるか” が最大の課題となっています。
SiCやGaNは、シリコンと比べて
- 耐圧が高い
- スイッチング速度が高速
- 損失が少ない
- 高温でも動作しやすい
という特性を持つため、同じ電力を扱う際でも 発熱が圧倒的に少なくて済みます。
この“発熱が減る”ことには別の恩恵もあり、
- 放熱用ヒートシンクが小型化できる
- 銅板・銅配線の量が減らせる
- 冷却装置の負荷が低減する
といった形で、結果的に 銅の使用量を減らせる 可能性があるのです。
特にデータセンターは大量の電力を消費し、冷却に莫大なコストと銅資材を必要とするため、SiC/GaN化が大きな省エネメリットをもたらすと期待されています。
入手困難なSiC MOSFETの現状
次世代材料が注目されている一方で、SiC自体の供給はまだ十分ではありません。
特に2024〜2025年は、世界の EV メーカーが一斉に SiC MOSFET へ移行したため、Wolfspeed(旧Cree)・ROHM・Infineon・onsemi などの製品が軒並み品薄 となりました。
理由は以下の通りです。
- SiCウェハーの生産設備が限られている
- 歩留まりがシリコンより悪く、量産が難しい
- EVメーカーが来年度分の在庫を“先買い”している
- 産業・データセンター向け電源でも採用が加速
ただし、各社は増産計画を進めており、
- Wolfspeed:米国と欧州に大型工場を建設
- ROHM:日本・ドイツのライン増強
- onsemi:SiC設備への大規模投資
- Infineon:車載パワー半導体工場を拡張
と、供給改善の兆しも見えています。
価格は依然として高いものの、将来的にはほぼ全ての高耐圧用途でSiC/GaNが標準になる と予測されています。
まとめ:省エネ化の切り札として、投資対象としても注目
SiC や GaN のパワー半導体は、電力ロスを劇的に減らし、冷却・銅資材の負担を軽くする“次世代のキーデバイス”です。
EV やデータセンターの需要が急拡大している今、これらの新材料は省エネ化の切り札として不可欠な存在になりつつあります。
供給不足が続く現状では価格は高めですが、長期的にはさらに普及し、産業全体の標準デバイスになるのはほぼ確実です。
技術としても投資対象としても、今もっとも注目すべき分野と言えるでしょう。